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2026.02.18

対談

「守る投資、捨てる投資」の明暗を分けるもの
──2026年、マーケティング投資はどこへ向かうのか【後編】

#マーケティング
MEMBER
田部 正樹さま
ノバセル株式会社
代表取締役社長
田部 正樹さま
ラクスルグループのCROとしてセールスマーケティングの統括、新規事業の立ち上げを担っている。
千葉 知裕
株式会社Macbee Planet
代表取締役社長
千葉 知裕
2021年12月に株式会社Macbee Planetの代表取締役社長に就任。成果報酬マーケティングのリーディングカンパニーとしての組織づくりや、グループ全体の事業を牽引している。
マクビープラネットでは、「マーケティング担当者1,086名を対象に、2026年の“投資シフトマップ”に関する実態調査」を実施しました。この調査は、2025年から2026年にかけて、どの領域の予算を「増やす/維持する/削る」のかを、BtoB企業とBtoC企業の違いに着目しながら可視化したものです。

結果、2026年の予算は、BtoC企業で約6割、BtoB企業で約5割が“増える見込み”と回答。また、優先的に増やしたい予算としては、BtoC企業で「デジタル広告」全般が支持されたのに対し、BtoB企業では「自社Webサイト・アプリ改善」と「生成AIツール・業務効率化ツール」が約3割に上ることが判明。BtoC企業では投資拡大の意向が強まる一方、BtoB企業では予算の最適化が進むという、明確な差が浮かび上がりました。

どの投資を守り、逆に手放すのか、その決断を迫られるいま、企業は投資の軸をどこに定めるべきなのでしょうか。ラクスル株式会社 上級執行役員 グループCRO 兼 ノバセル株式会社 代表取締役社長 田部正樹さまとマクビープラネット代表の千葉知裕の対談をもとに、その最適解を探る本対談。

後編では、生成AIとの向き合い方やLTVマーケティングの重要性について、深掘りしていきます。


前編はこちら>>>

生成AIブームを、どう見極めるべきか

——調査結果から、特にBtoB企業において「生成AI」に対する投資を優先的に増やしていきたい意向が見えてきました。また、実際、生成AI関連のツールを導入する企業は、増えているかと思います。このトレンドをどのようにご覧になっていますか?
田部さま(以下敬称略)
そうですね。「生成AIに投資しました」という企業はここ1年ほどで急激に増えていますが、それによって「コストが半分になった」とか「売上が2倍になった」といった日本企業の話は、ほとんど聞いたことがありません。このまま企業活動にインパクトを与えられないと、そのうち淘汰されていくでしょうね。

そもそも「生成AIを活用したいなら、Googleでいいじゃん」というのが僕の考えです。なぜわざわざ個別のツールを導入するのかわからない。「このKPIを改善するには、生成AIを搭載したこのツールが絶対に必要なんだ」と確信を持てているのであればいいですが、そうでなければ無駄な投資になると思いますね。それなら既存の広告費を増やしたほうが、まだ売上につながる気がします。
千葉
流行り物に対する予算はゆるくなりがちですよね。認知広告のような古くからある手法は成果を厳しく見られるけれど、「生成AIなら、とりあえずやってみよう」という判断になるのは、良くないとは思っています。
田部
広告関連の生成AIの話でいうと、これからは生成AIによってクリエイティブが大量生産されるので、同じようなクリエイティブばかりになっていくはずです。みんなが成果の出やすいクリエイティブを真似していきますから。そんなところに、明らかに他とは違う“誰も見たことがない”クリエイティブを出すと、当たるでしょうね。

とはいえ、3ヶ月も経てば、その効果も薄れてくる。その次またどうするかを考えて設計しておくことが重要で、これは人間にしかできないと思います。

成果が出ていないのに、なぜ投資をやめられないのか

——調査結果では、BtoC企業では「マス広告」が、BtoB企業では「デジタル広告」が、「成果が出ていないと感じるマーケティング活動」の比較的上位にありながらも、「優先的に予算を削りたいマーケティング領域」の上位には入っていないという矛盾が見られました。ここにはマーケターのどのような心理が働いていると思われますか?
田部
おそらく、成果が出ていると感じる、つまり成果をすべて説明できる施策は、全体の2〜3割程度しかないと思うんですね。日本のマーケターが持っているKPIは、たいていCPAであり、企業の売上成長に必ずしもコミットしていないので、たとえ成果が出ていなくても、どうにかなってしまう。

それに、成果が出ている実感がないからといって、長年続けていたテレビCMをやめてしまったら、2〜3年後の売上がどうなるのかわからない恐怖がありますよね。「だったら、前年踏襲で、とりあえず続けておくか」という判断になりがちです。自分で意思決定の責任を負いたくないからです。

BtoB企業におけるデジタル広告も同様で、いくらデジタル広告で思うような成果を出せていなかったとしても、いまの時代に、デジタル広告をやめる決断をできないのは、ある意味、当然ではないでしょうか。
——調査において、マーケティング投資の優先順位を決める観点について聞いたところ、BtoB企業のほうが「データ取得・顧客理解の深さ」を重視する傾向が見られました。これについて、どう思われますか?
田部
BtoB企業に限っていうと、まずは自社の売上構成比率の上位20社の名前を言えなければ、話になりません。そのうえで、なぜ彼らが自社を選んでくれているのか、理由を説明できるようにしておきたい。

なぜなら、多くのBtoB企業では売上の8割は上位20%の顧客でつくられているからです。だからこそ、顧客理解をしたいなら、上位20社だけにフォーカスすべきなんです。

逆に、売上構成比率の下位企業や、展示会で名刺交換しただけの人の声は、ノイズでしかない。それなのに、「大切な見込み客にこう言われたから、こうすべきです」なんて真に受けて言う通りにしたところで、1回のラッキー受注で終わるのが関の山ですよ。

自社にとって誰が“LTVの高い顧客”なのか。本当に欲しい企業のイメージを関係者全員で共有しておくことが、何よりも大切です。

いまこそLTVを軸にマーケティングを組み直すとき

——2026年にマーケティング担当者が最優先でやるべきことを1つ挙げるとしたら、何になりますか?
田部
「LTVマーケティング」です。まだやっていないなら、絶対にやったほうがいい。マーケティングはあくまでも入口に過ぎません。同じ1人が入ってきたときに、途中で離脱してしまうか、長期的に利用し続けて大きな売上を生む顧客になってくれるかは、マーケターの腕次第。

これまでのマーケティングは、いかに入口を広げて入ってくる人を増やせるかに注力していましたが、BtoC/BtoB問わず、実際の売上はLTVの高い顧客に大きく依存しているはずです。

人口減少や競争激化が進む中では、数を集めるマーケティングではなく、LTVの高い顧客を見つけて獲得するためのチャネルや打ち手に投資を集中させることが、極めて重要になっていくと思います。
——最後に、この投資シフトの中で、マクビープラネットでは、マーケティング領域でどんな支援をしていきたいですか?
千葉
今回の調査から見えたのは、投資先の変化よりも、“投資基準”の変化だったと思います。成果が見えにくいものから削られ、LTVの高い顧客の獲得に向いていく。田部さまとの議論を通じて、これまでマクビープラネットで「成果報酬マーケティング」を標榜してきたのは間違いではなかったと、確信を持てました。これからもLTVを軸にROIを追求しながら、マーケターのみなさんが社内で説明責任を果たしやすくするための支援をしていきたいです。

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