2026.04.30
対談
SNS・インフルエンサー施策は“認知”で終わらない ──事業成果と経営視点で問い直す、これからのマーケティング【前編】
#マーケティング

MEMBER
パーソルテンプスタッフ株式会社
最高マーケティング責任者CMO
友澤 大輔さま
ベネッセコーポレーション、ヤフー、パーソルホールディングス、イーデザイン損害保険を経て、2024年からパーソルテンプスタッフ株式会社 執行役員CMO。
株式会社Macbee X
代表取締役社長
藤原 賢太
インターネット広告代理店、ソフトバンクグループ、ウィルゲートを経てMacbee Planetへ。2023年に株式会社Macbee X代表取締役社長に就任
SNS広告やインフルエンサーマーケティングは、もはや単なる話題化の手段ではありません。
マクビープラネットが1200名のマーケティング担当者におこなった今回の調査でも、施策の目的は「認知拡大」だけでなく、「Web流入」「新規獲得」「継続率向上」「ファン醸成」へと広がり、重点媒体や評価指標も変わり始めていました。
今回は、パーソルテンプスタッフ株式会社 最高マーケティング責任者CMO・友澤 大輔さまをゲストに迎え、こうした変化を単なる媒体トレンドではなく、企業の期待値と説明責任の変化として捉え直します。
マクビープラネットが1200名のマーケティング担当者におこなった今回の調査でも、施策の目的は「認知拡大」だけでなく、「Web流入」「新規獲得」「継続率向上」「ファン醸成」へと広がり、重点媒体や評価指標も変わり始めていました。
今回は、パーソルテンプスタッフ株式会社 最高マーケティング責任者CMO・友澤 大輔さまをゲストに迎え、こうした変化を単なる媒体トレンドではなく、企業の期待値と説明責任の変化として捉え直します。
認知を広げるだけでは、もはや足りない
——今回の結果から、SNS施策に対する企業の期待値の変化をどうご覧になりましたか?
マクビープラネットが実施した調査結果はこちら>>>
マクビープラネットが実施した調査結果はこちら>>>
藤原:
数年前まで、SNS施策ではフォロワー数やいいね数、インプレッション数といった表面的な指標が重視される傾向が強かったと思います。ただ、それがどれだけ事業利益に貢献しているのかを評価するのは難しかったんです。
一方で、ユーザーのSNSに対する向き合い方はこの数年でかなり変わってきました。今はSNSが、以前よりダイレクトに事業貢献へ結びつきやすい接点になっている。だからこそ、露出の大きさよりも、購買や問い合わせなどに近い指標を置いてSNS運用やSNS広告に取り組む企業が増えてきていると感じます。
一方で、ユーザーのSNSに対する向き合い方はこの数年でかなり変わってきました。今はSNSが、以前よりダイレクトに事業貢献へ結びつきやすい接点になっている。だからこそ、露出の大きさよりも、購買や問い合わせなどに近い指標を置いてSNS運用やSNS広告に取り組む企業が増えてきていると感じます。
友澤さま
(以下敬称略):
(以下敬称略):
調査結果にはかなり納得感がありました。事業会社としてマーケティングに向き合う中で、相対的にはテレビの影響力が下がってきていて、その分ソーシャルメディアの存在感が大きくなっているのは実感としてあります。
少し前までは、SNSやインフルエンサー施策は“試しにやってみるもの”という要素もあったと思います。ただ、本来、事業会社のゴールは露出そのものではなく、最終的に売上や利益へどう結びつけるかにあります。そう考えると、ソーシャルメディアやインフルエンサーの役割が事業の根幹にまで入り込んできたという見方は、とても自然だと思います。
少し前までは、SNSやインフルエンサー施策は“試しにやってみるもの”という要素もあったと思います。ただ、本来、事業会社のゴールは露出そのものではなく、最終的に売上や利益へどう結びつけるかにあります。そう考えると、ソーシャルメディアやインフルエンサーの役割が事業の根幹にまで入り込んできたという見方は、とても自然だと思います。

——単にSNSが伸びている、というより、企業がSNSに求める役割そのものが変わってきたということでしょうか?
友澤:
そうですね。施策の進化というより、企業側の期待値の変化だと思います。以前は「どれだけ広がったか」が中心でしたが、今は「それで何が起きたのか」が問われるようになっている。そこが大きいですね。
藤原:
私もそう思います。実際にクライアント企業からの相談内容も変わってきています。以前はSEOの相談が多かったのですが、最近は「攻略の糸口はSNSにある」と考え、その中でも広告をどう活用するかという話がかなり増えています。ユーザーの接触時間が一番長い場所がSNSになっている以上、企業がそこに期待するものが事業成果寄りになるのは自然な流れだと思います。

企業はなぜ、SNS施策に“事業寄与”を求めるようになったのか
——SNS施策に対して、企業がより具体的な成果を求めるようになった背景には何があるのでしょうか?
友澤:
やはり大きいのは、メディア接触の変化です。若い世代をターゲットにする場合、以前よりもSNSの重要性は明らかに上がっています。今後は人口減少も進んでいくので、若い人たちの間に認知や想起をつくっておかないと、その先でかなり苦しくなる場面が出てきます。
そういう意味では、SNS施策は単にその場の反応を取りにいくものではなく、未来の顧客接点をつくるものでもあります。メディア環境や世代構造の変化を踏まえると、企業がSNSに期待する役割が大きくなるのは当然だと思います。
そういう意味では、SNS施策は単にその場の反応を取りにいくものではなく、未来の顧客接点をつくるものでもあります。メディア環境や世代構造の変化を踏まえると、企業がSNSに期待する役割が大きくなるのは当然だと思います。
藤原:
私も背景には、生活者の行動変容があると思っています。テレビを見ている時間より、スマートフォンを触っている時間の方が長いですし、その中でも一番接触時間が長いのがSNSです。マーケティングや広告の観点で考えると、一番タッチポイントがあるのがSNSになっている。
だからこそ、「どう事業利益につなげるか」という設計が必要になってきています。企業からの相談も、「SNSをやりたい」ではなく、「SNSをどう成果につなげるか」という内容に変わってきていますね。
だからこそ、「どう事業利益につなげるか」という設計が必要になってきています。企業からの相談も、「SNSをやりたい」ではなく、「SNSをどう成果につなげるか」という内容に変わってきていますね。

——重点媒体がX(旧Twitter)からYouTube、TikTokへと移っている点については、どう見ていますか?
友澤:
これもかなり納得感があります。特に若い世代を見ていると、縦型動画に接触する時間は非常に長い。Xのようなテキスト中心の接点ももちろんありますが、今生活者がより自然に触れているのは動画です。しかも、動画の方が情報量も多く、空気感や本音も伝わりやすい。
また、高い費用をかけてタレントを起用するよりも、親和性の高いマイクロインフルエンサーの方々に本音で語ってもらう方が視聴者が動く、という流れも強まっています。企業としても、単に広げるだけでなく、動いてもらうことを意識するようになった結果だと思います。
また、高い費用をかけてタレントを起用するよりも、親和性の高いマイクロインフルエンサーの方々に本音で語ってもらう方が視聴者が動く、という流れも強まっています。企業としても、単に広げるだけでなく、動いてもらうことを意識するようになった結果だと思います。

“露出”から“行動”へ。評価軸はどう変わったのか
——SNS施策に求められる役割が変わる中で、評価軸も変わってきているように見えます。現場からの報告では、どのような指標を重視されていますか?
友澤:
一番重要なのは、やはり行動変容です。私たちで言えば、エントリーや応募のような最終アクションに近い指標ですね。そこに対してどのメディアがどう貢献したのかは、まず見ます。
ただ、それだけでは測れないものも多い。そこで重視しているのが、「エフェクティブリーチ」です。つまり、単に届いたかではなく、狙いたい人に有効に届いているか。特に若い世代のように、こちらが取りにいきたい層にきちんと接触できているのかは、認知や想起の面で非常に大事です。
以前はCPAのような獲得指標が中心でしたが、いまは間接的な接点や態度変容も評価していかないと、SNS施策の本質を見誤ると思っています。
ただ、それだけでは測れないものも多い。そこで重視しているのが、「エフェクティブリーチ」です。つまり、単に届いたかではなく、狙いたい人に有効に届いているか。特に若い世代のように、こちらが取りにいきたい層にきちんと接触できているのかは、認知や想起の面で非常に大事です。
以前はCPAのような獲得指標が中心でしたが、いまは間接的な接点や態度変容も評価していかないと、SNS施策の本質を見誤ると思っています。
——インフルエンサー選定でも、フォロワー数よりエンゲージメントや親和性が重視される傾向が出ています。この変化はどのように捉えていますか?
友澤:
よく言われることですが、量から質への転換だと思います。もちろん量も欲しいのですが、それだけでは足りません。企業にとって本当に意味があるのは、購買や行動につながる質です。
これまでは、フォロワー数が多い人にお願いすれば広がる、という発想が強かった。ただ、経営の立場からすると「広がって、その後どうなったのか?」という問いに答えられなければ意味がありません。どれだけファンになってくれたのか、どれだけ影響を与えたのか。そこが重視されるようになってきたのだと思います。
これまでは、フォロワー数が多い人にお願いすれば広がる、という発想が強かった。ただ、経営の立場からすると「広がって、その後どうなったのか?」という問いに答えられなければ意味がありません。どれだけファンになってくれたのか、どれだけ影響を与えたのか。そこが重視されるようになってきたのだと思います。
藤原:
提案する側としても、その変化はかなり意識しています。ユーザー行動がSNS中心になっている以上、認知目的から購買目的へ軸足が移るのは自然ですし、私たちも施策経由でどれだけ売上につながっているか、どれだけ成果が上がっているかを、できるだけ分かりやすい形で示す必要があります。
ですから、以前よりもCPAのような成果指標を明確に置いて提案する機会は増えています。単に露出を取るのではなく、行動につなげる前提で設計する。その発想がかなり強くなってきたと思います。
ですから、以前よりもCPAのような成果指標を明確に置いて提案する機会は増えています。単に露出を取るのではなく、行動につなげる前提で設計する。その発想がかなり強くなってきたと思います。

最大の壁は、施策の質ではなく“社内で説明できるかどうか”
——一方で、今回の調査では「効果測定が難しい」が大きな課題として挙がっていました。なぜSNS施策は、ここまで測りにくいのでしょうか?
友澤:
SNSは、検索広告やリスティング広告とは性質が違うからです。検索広告であれば、もともと比較検討している人に対して広告を出すので、そのまま購買や応募に結びつくのは比較的分かりやすい。でもSNSは、不意に流れてきたものを見て「なんとなくいいな」と思い、フォローしたり、後日検索した時に思い出したりするような、間接的な態度変容が多いんです。
ところが経営から求められるのは、どうしてもダイレクトな成果です。ラストクリックとしてフラグが立たない限り、貢献したと見なされにくい。SNSはその前段階で効いていることが多いので、アトリビューションの観点でも説明が難しいんですね。
ただ、難しいからやらないわけではない。実際には効いていると感じているから続けている。その“見えないものを証明しなければならない”ところに、難しさがあります。
ところが経営から求められるのは、どうしてもダイレクトな成果です。ラストクリックとしてフラグが立たない限り、貢献したと見なされにくい。SNSはその前段階で効いていることが多いので、アトリビューションの観点でも説明が難しいんですね。
ただ、難しいからやらないわけではない。実際には効いていると感じているから続けている。その“見えないものを証明しなければならない”ところに、難しさがあります。
——社内理解が十分でない企業では、どうやって合意形成を進めていくべきでしょうか?
友澤:
まずは現実をきちんと経営に届けることだと思います。経営陣も、テレビが以前ほど強くないことや、若い世代がSNSを見ていることはなんとなく感じているはずです。ただ、ファクトがないと自信を持てない。だからこそ、事実をきちんと共有していく必要がある。
そのうえで、大事なのはスモールスタートです。いきなり大きな予算をつけてやるのではなく、小さく試して実績をつくる。成果が出たら共有して、少しずつ大きくしていく。その積み重ねの方が、結果として早いと思います。
そのうえで、大事なのはスモールスタートです。いきなり大きな予算をつけてやるのではなく、小さく試して実績をつくる。成果が出たら共有して、少しずつ大きくしていく。その積み重ねの方が、結果として早いと思います。
藤原:
私も基本的には同じ考えです。多くの方がいきなり100の成功を求めますが、マーケティングで大切なのは、まず1の成功をつくることです。ターゲットを細かく切って、どの層に対して、どんなSNS施策を打てば、どう事業利益につながるのか。その仮説をもとにスモールスタートすることが非常に重要です。
1をつくれれば、2も3もつくれる。そうやって再現性を高めながら、最終的に100へ近づけていく。SNS施策に限らず、これが本質だと思っています。
1をつくれれば、2も3もつくれる。そうやって再現性を高めながら、最終的に100へ近づけていく。SNS施策に限らず、これが本質だと思っています。

——新しい施策に挑戦しにくい背景には、組織や評価制度の問題もあるのでしょうか?
友澤:
あると思います。事業会社としては、短期で結果が出やすい安全な施策の方が評価されやすい。新しいことに挑戦して、もしうまくいかなかった時に誰が責任を取るのか、という問題もありますから。
ただ、そればかりだとジリ貧になります。うまくいっている会社は、絶対に勝てる施策をやりながら、その一部をテスト枠として回しています。10〜20%程度でも新しいものを試し続けないと、結局は焼き直ししかできなくなる。大切なのは、評価指標を完璧につくること以上に、なぜその投資をするのかをうまく説明できることだと思います。
ただ、そればかりだとジリ貧になります。うまくいっている会社は、絶対に勝てる施策をやりながら、その一部をテスト枠として回しています。10〜20%程度でも新しいものを試し続けないと、結局は焼き直ししかできなくなる。大切なのは、評価指標を完璧につくること以上に、なぜその投資をするのかをうまく説明できることだと思います。
藤原:
結局、SNS施策の論点は、施策の質そのものだけではないんですよね。社内でどう理解をつくり、どう小さな成功を積み上げ、継続して伸ばせる形にしていくか。その設計まで含めて考える必要があると思います。
後編に続く>>>
後編に続く>>>